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2016年7月12日 (火)

EUが発行したGDPRの英文に苦言を呈してみる(笑

基準書や規格書などを作成していると、文章の平仄(ひょうそく)に敏感になります。
で、前から気になっていますがEUが出す規制文書の平仄は実はあまりよくないという印象を持っています。
個人情報保護に関するGDPRも相変わらずのようです。
 European Commission - Protection of personal data
 http://ec.europa.eu/justice/data-protection/

GDPRでは、本人からの同意の取得方法について、明示的な方法での取得が明記されました。これをexplicit consentと呼んでいます。
この用語は今回の目玉のひとつと言ってよいと思います。
それなのに、それとは関係ない文章でもexplictという単語を使ってしまっています。

EUに、お前の英語は酷いと言っても直さないでしょうから(笑)、和訳でこの酷さを解消するのがよいだろう。ということで、以下のように意訳しました。

5条1項(b)
collected for specified, explicit and legitimate purposes
特定され明確でありかつ適法な目的のために収集されなければならず

9条2項(a)
has given explicit consent
明示的に同意を与えた

21条4項
shall be explicitly brought to
明確にデータ主体の注意がもたらされ

22条2項(c)
the data subject's explicit consent
データ主体の明示的な同意

49条1項(a)
the data subject has explicitly consented to the proposed transfer
データ主体が提案された移転に明示的に同意した

つまり、原文のexplicit/explicitlyについて、consentに係る場合には「明示的」と和訳し、それ以外については「明確」と訳してみました。
逆に言うと、明確にと和訳した箇所は、平仄からすると、そもそも英文でexplicitを使うのは好ましくないと言えます。
その意味であれば、clearly, expressly や clarifyなど同義の別の単語をこの文書では使うべきでしょう。
つまり、
5条1項(b)では、claered and clarified
21条4項では、expressly
などの単語を使うべきで、
さらに、49条1項(a)は、explicitly consentedとはせずに、explicit consentで作文すべきでしょう。
そのためには、9条2項(a)と平仄を揃えて、has given explicit consentとすればよいでしょう。

ちなみに、明示的同意については10年前くらいから紹介してきたものと同じです。

 アメリカ企業におけるCPO業務の実際:https://youtu.be/RviU18iIGOI

明示的同意取得についての説明は、6分くらいから3分間くらい

URLで再生開始時間を指定してありますがスマフォで開くと、最初から再生されるようです。
リンクをブラウザで開くと該当箇所から再生されます。

ということで、全文の和訳は某所からじきに公開されるとのことです。
公開されましたら、この場とtwitterでもご案内いたします。
 https://twitter.com/4416sato

お楽しみにv

(追記)
ということで、仮訳全文が公開されましたので、ご参照ください。

 JIPDEC:EU一般データ保護規則(仮訳)について

7月 12, 2016 |

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