運営と運行
この季節は、1年のうちでもっとも短時間で視野を広げることができる。
通常3ヶ月くらい思案しなければならないことが、一晩で飛躍的に整理が進む。
なぜこの季節かというと、会社を去った諸先輩との呑み会があるからだ。
仕事に忙殺されているいまとなっては、夜8時から朝5時まで議論を白熱させられる機会は、この季節以外にはあり得ない。
ただ、10時間の呑み会では、おもしろいことに、最初の6時間以上の議論は、最後の2時間程で得ることになる情報の前振りに過ぎない。
これは毎年同じだ。
議論するときには、背景の理解と使う言葉の定義という前振りがいかに重要なのかがわかる。
奇しくも、その配分は8:2に相当している。
この呑み会では、多くの話題について行ったり来たり飛び回るが、背景色は一色だ。
大先輩が設定したカラーは、今回に限らず文字にすると、いつも単調だ。
「知って学び、思って得る。」「Outside to Inside, Inside to Outside.」
この言葉はとても共感することだが、これそのものを紹介するのは別の機会にする。
ここでは「知った」言葉としての「運営と運行」について紹介することにする。
紹介するために文章を書くことは、「思った」ことになる。
そして、ブログに載せることは、Inside to Outside ということだ。
●運営と運行
事業を運行するのが CEO であり、オール漕ぎの号令役。
事業を運営するのが President であり、舵取り役。
運営力を失った会社は、運行力だけでは成長できない。
むしろ、衰退する潜在的可能性の方が高い。
企業には短期的ではないビジョンを示す President が必要である。
それがなければ、CEO が売り上げ・利益を追求するだけになってしまう。
しかし、売り上げ・利益を追求するだけでは失速する。
売り上げ・利益ではないビジョンも追求する会社が、結果的に、売り上げ・利益を成長させることができる。
会社のステークホルダは、運営と運行の両方の価値を高めることに興味をもつべきだ。
しかし、ステークホルダのうち株主において注意すべきは、デイトレーダに代表される短期投資家の存在だ。
かれらの主たる興味は、運行利益のみとなりやすい。
それによって株価が左右される場合には、その株価の維持にばかり気をとられてしまうと、結果的に、運営がおろそかになり運行を過度に優先するということが起こる。
これを防ぐことを CEO に期待するのは、正しくない。
CEO は運行に責任を持つ者だからだ。
CEO が運行の向上に全力を注ぎつつ、運営を司る President が的確な舵取りをしなければならない。
President と CEO を兼務するのは、至難の技であるとともに、求められるスキルが異なるため、分業にした方が President と CEO に最高の人材を起用しやすくなるはずだ。
ここで述べた President & CEO の定義からすると、日本では、CEO を社長と呼び、President を会長と呼ぶことがある。
また、President が舵取り役で、CEO がオール漕ぎの号令役であると考えるならば、
会社全体の CEO の下に、Company などの事業部制を設けて、そこに President を配置する場合には、そのことに十分な注意が必要となる。
事業を行なうとともに、営むことが必要不可欠なのである。
この2つを分けて考えてみると、「IT産業分野の失策」についての整理を進めることができる。
12月 31, 2005 | Permalink
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