2005年5月 9日 (月)

経済産業省 e文書ガイドラインの補足

「文書の電磁的保存等に関する検討委員会」の報告書が発表されました。

http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/e-doc/

文書の電磁的保存の際の注意点などについてをまとめたものとして、よい報告書になっていると思います。
ただ、意図的にふれなかったことがあるので、ここで紹介しておきます。

佐藤としては、「スキャンされた電磁的文書」(文字データではなく紙面のものをスキャナなどで読み取った文書)についてe文書法に基づいて受理されるための画質の定量的な技術要件について含めたかったです。

たとえば、紙の領収書をスキャナで電子化しておいたときに、どの程度の画質で保管しておけば、それがe文書法として受理されるのかを特定してあげたかったということです。

そうしないと、スキャンした人としては「この程度の解像度でよいだろう」と思っていたものが、いざ、使おうとしたときに、「この解像度では不十分なので、もとの紙面を提出してください」と言われる可能性があるとしたら、結局、紙面を保管しておかなければならなくなるからです。

これらは定性的でも問題がないように思われるかもしれませんが、保存する側は「紙面の情報が読める程度」を目安にすると思われるのに対して、受理する側は「紙面の改ざんの有無を判読できる程度」を期待することになり、実は単純ではありません。
特にそのような場合、「良い人」は、そもそも紙面の改ざんなどということはしたこともなく、その知識にも乏しいと考えるのが妥当でしょう。
その人達に対して、「紙面の改ざんの有無を判読できる程度」を認識してもらうためには、「改ざん手法」を知ってもらい、実際に自分の使用するソフトで、「改ざんした例」をファイルに保存してみて、その「改ざん痕」が表示画像で見つけられるかどうかを、スキャン時の設定とファイル保存時の設定を試行錯誤しながら決めてもらわなければなりません。
しかし、そこでいくら検証しても、「改ざんの有無を判読するプロ」の目から見て十分かは、その電磁的文書を提出してみるまでわからないということになります。
そんなこともあって、スキャン画像を保存する際の画質の要件について、定性的ではなく、定量的に定められるとよいのではないかと思っていました。
この問題は、技術的には「可読性」ということで、報告書の中ではふれています。

しかしながら、以下の理由などによって画質の定量的要件についてはふれないことになりました。

・スキャン時の解像度については、対象とする文書によって一概に数値を定めるのは現実的ではない
・保存形式が JPEG などの非可逆圧縮形式だと画質を示すための共通の指定方法がない(*注1)
・保存形式が、GIF などの可逆圧縮形式であれば、色数と解像度だけでよいが、それでは可逆圧縮形式を推奨する誤解を生んだり、逆に誤って非可逆圧縮形式での解像度の指定と解釈されたりするので、それもよくない

いずれの理由も正論ですが、JPEG であれば、特定のソフトウェアを例に出して、その設定方法を例示として示せばよいですが、やはり、特定のソフトウェアの名前を政府のガイドラインに記載することは不公平になるであろうということで採用されませんでした。

実際には委員会席上では、ある代表的なソフトウェアによる画質設定数値ごとの実例を参考にしながら、そのソフト固有の「レベル数値」というもので、可読性を議論しました。
これを報告書でそのまま、「『○○○○○というソフトウェア』であれば、RGB24bit, ○○○DPI でスキャンした画像を、JPEG で『画質レベル○○○』にて保存すれば、改ざんの有無の判読に必要な画質である」と記載できれば、読者からするとすっきりとしたと思うのですが、『』部分が特定製品の固有名称と固有用語となるため、報告書には記載できなかったのは残念です。
とはいえ、ガイドラインとして記載するのに難があるというのは仕方のないことだったと思っています。
自分でよく考えずに単に読んだとおりのことをしようとする人が多いので、文書として世に示すものについて保守的に慎重にならざるをえないからです。


委員会としても、画質の具体的な設定事例については、報告書としては記載できないが、今後、この委員会のメンバーなどが世の中の説明会などで例示するなどして、誤解がないように説明していくのが現実的であろう。報告書の文書として適当ではないからといって、説明としても画質についての指定方法を述べるべきではないということではないであろう。
ということでした。(この場にいる委員が口コミで補足説明して広めてもらえないかということでした。苦笑)


「『○○○○○というソフトウェア』の『画質レベル○○○』」の○○○については、いずれ機会があればそのときにご紹介したいと思います。
特定製品名を例示することが最善でないことはよく理解していますが、その一方で、ユーザが知りたいことは、改ざん痕の有無を判読できるかを試行錯誤する方法ではなく、e文書として受理してもらうための具体的な設定方法だろうとも思いますので。。。


注1:
厳密には技術的に定義できるが、圧縮のためのどのパラメータをユーザが自由に設定できるようにしているかは、ソフトウェアによって異なるため、世の中にあるソフトウェア共通の指定方法はないということになります。

追記(2012/6/14):
今更ながらですが、2005年に以下のような特集記事を寄稿しておりました。

 ITメディア連載「e文書法の活用術」

口コミのご参考まで。

5月 9, 2005 | | コメント (20) | トラックバック (2)