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2011年2月17日 (木)

「窓口のオンライン化」ではなく「システムのインターネット対応」と考えるべき

IT戦略本部企画委員会の電子行政に関するタスクフォース第11回
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/denshigyousei/dai11/kaisai.html

傍聴した雑感を備忘のため書いておきます。
(メモを書き込んだ資料を捨てたいので 笑)

以下は、個人的に気になった箇所だけをピンポイントに抜き出して雑感を書いただけなので、審議の総括や主要箇所が抜き出されているわけではありません。(ここに書いていないことで、有意義な審議もあったということです)

「オンライン利用に関する計画について」だが、これは前回の「電子行政タスクフォース雑感」でも書いたことだが、これまでを総括して終わりにして、仕切りなおした方がよい。

構成員から、「すべての手続きをオンライン化することを考えるべき」という提案をされ、これを事務局が法的に制約があるとして否定したが、これはまったくの間違えだ。(というか、そもそも、構成員意見を事務局が否定するというのは、どういう立場での発言として許されているのだろうか)
事務局が言うには、「家にパソコンがない人が手続きできなくなると法的に難しい」であったが、前回の雑感でも書いたように、すべてオンライン化した上で、従来の役所窓口にはインターネット端末を設置して、そこで入力するための支援をする職員をおいて、窓口での手続きも継続すればよい。
こう書くと、これまでと異なる窓口のようかもしれないが、単に窓口の中で使っている端末をインターネット端末にするということでも意味は変わらない。それなら、窓口の見た目は今と同じだ。

課題とすべきなのは、窓口手続きとオンライン手続きの併存ではなく、窓口手続き用システムとオンライン手続き用システムを両存させようとすることだ。
そのようにすれば、窓口手続きは、オンライン手続きの利用度合いを見ながら、縮小や別の手続きとの統合を段階的に実施することにも支障がない。
窓口専用手続きシステムを使っている限り、それを段階的に縮小することはできない。最後のひとりがいなくなるまで、そのシステムを稼働し続けなければならない。

上記を踏まえると、「オンライン利用」という表現が適当ではない。
よって、「これまでを総括して終わりにして、仕切りなおした方がよい。」と思うのである。

すなわち、「これまでは失敗だった」と総括する。
しかし、手続きをすべてオンライン化することが失敗だったのではなく、それを実現する方策が失敗だったのであって、全手続きをオンライン化する目標は取り下げるべきではない。

したがって、
窓口手続きのオンライン化ではなく、
窓口手続き専用システムのオンライン手続き対応化とするべきだ。
技術的には、
窓口手続きシステムの機能を取り込めるようなオンライン手続きシステムの導入
となる場合もあるだろう。
既存システムに手を加えるのか、新規システムで既存機能を設けるのかの違いということだ。

かなり乱暴に、はしょって書けば、本タイトルのように
「窓口のオンライン化」ではなく「システムのインターネット対応」と考えるべき
ということになるだろう

さらに、前回のタスクフォースで構成員から意見があったが、
現行の手続きを単にオンライン化するのではなく、手続きそのものを見直すべきというのも同感だ。
住民票をコンビニやネットで取り寄せられるようにすることが目標ではなく、他の手続きへの提出のために住民票の発行をすることがないようにすることを、最終目標に置くということだ。
たとえば、住民票を取り寄せる機会は多くの人にあるだろうが、住民票を家に飾っておきたいから取り寄せる人はいないはずだ。
何らかの手続きの提出種類として、住民票が求められているだけで、役所からもらった住民票は、そのまま別の手続きに提出するだけの用途しかない。
これらは連携されるべきで、理想を言えば、住民票の発行手続きはなくなって然るべきということだろう。
もちろん、住民票を家に飾りたい人のためには、残してもよいが・・・
以前は、民間の手続きのために、企業がとりあえず提出させるということがあったが、昨今は個人情報保護の観点で、民間も住民票を見て確認することはあっても、徴収するということは減っていると思われる。
この点については、国の行政と、自治体の行政との壁があるので簡単ではないが、このタスクフォースはそれを議論すべき場であろうと思う。


その他に、構成員から、紙申請は職員による入力ミスのリスクも少なくないという意見があった。
このリスクは、紙申請した後に職員が入力したデータを、本人が見る機会がすぐにないから、問題発生に気付きにくい。という点に着目してはどうだろうか。
上記のように、窓口ではオンライン手続きシステムへの入力を職員が本人に代わって代行する。ということであれば、入力結果を印刷して、本人に控えとして渡せばよい。
渡された内容をちゃんと確認するかは本人次第であるが、それを確認する機会が担保される点で、現在の窓口手続き専用システムにどう入力されたかを、本人がその場で通知されない現状よりも、入力ミスのリスクは低減するはずだ。

また、構成員から災害時などの情報システムの可用性の点の指摘があったが、これは、現在の窓口手続き用システムでも言えることだ。それと同程度の検討があればよいはずで、オンライン化して増える課題ではない。
課題になるとすれば、紙で申請されたものを、電子化せずに、紙でだけ管理している手続きについてだろうが、それが紙である必要があるのなら、いよいよ、その手続きはオンライン化から除外してもよいかもしれない。

最後にもう1点、これまでの「オンライン利用に関する~」を、いったん終了した方がよいパラダイムシフトがある。
すべてをオンライン化する場合には、現在の約7000種類の手続きのシステムを、それぞれ上記のようにして移行するのは、確かに困難であった。
そのため、重点71手続きをまず決めて、その他は費用対効果等を評価して、取捨選択する必要があっただろう。

しかし、霞ヶ関クラウドという俗称の省庁間共有情報システム環境を平成24年度末までに運用開始することが決まっており、今年度になって、政府は政府CIOを設置することも決めた。
これによって、何が変わるかと言えば、これらすべての手続きを、ある程度の数のワークフロー・エンジン・システムに集約することができるという、環境変革が起きていることを見落としてはならない。
技術的には、省単位でもワークフロー・エンジンへの集約は可能であるが、扱う手続き件数が増えてくると、システムの特にハードウェアに柔軟なスケーラビリティが求められることになる。しかし、ハードウェアとソフトウェアを一体調達する省庁において、そのような共有情報システムを構築することは、これまでの業務縦割り型のIT構築では、予算措置が困難だったものと思われる。
しかし、業務共有、省庁共有での情報システム・ハードウェア利用に実現可能性が出てきた今は、ワークフロー・エンジン・システムに集約することは、現実味が出てきている。
(逆に言うと、霞ヶ関クラウドは、そのようなことができるようなシステムにしないと、単なる共用ハウジングセンターにしかならない。)

このとき、経験のない者は、ワークフロー・エンジンでの手続き集約と言っても、数千は無理だろうと思うかもしれないが、保険業界では、大手になれば数千の商品を持っており、それを単一のワークフロー・エンジンに集約した例は国内にもある。
保険業界と接点がないと知られていないだろうが、保険商品というのは、普段われわれが接する保険会社の営業担当が紹介してくれる数点だけではない。
これは、100円均一ショップなどの小売店チェーンが本部に数万点の商品登録をしていて、その中から、各店舗が自店舗の購買層に合わせて数百品を選んで店舗陳列しているのと同じ関係だ。
そして、保険商品の品数と行政手続きの種類の数の多さには、共通点がある。
保険商品は、さまざまな条件で保険加入者の料率が変わるわけだが、どの条件の組み合わせの保険商品であるかによって、必要な書類が異なり、また、保険会社内での、それら書類の審査部署や順序も異なり、それが複雑であるために、手続きの種類が増えていくのである。
まさに、行政の手続きが7000種類もあるといっている種類数の数え方と同じだ。
ワークフローの類型の数は、ある程度の種類しかないのに、それを処理する部署が異なれば、部署ごとに数を数えていくからだ。
おわかりのように、類型が同じで、部署が異なるだけ。というのは、ワークフロー・エンジンで処理すれば、単にインスタンスが異なるだけで済ませられる。

「オンライン利用に関する~」で事務局は、IT戦略本部設置以来の数年間で検討したことだと胸を張るが、
むしろ、これだけ技術革新が速い時代に、動的なパラダイムシフトを踏まえずに、初年度の環境を礎に検討し続けていることが、周囲の状況を見失うのではないかとさえ思った。


個別に解決策の例示をしたが、この種の議論をするときには、ビジョナリーが必要なのだと思う。
決めようとしている方針は、100年後をも思い描いたものなのか?が問われる。
この件であれば、100年後にも紙の申請とネット申請を別のシステムでやるの?ということに疑問を持たなければならない。
そこで、本当に100年後の遠い未来のことなのか?というとそう思ってはいない。
100年後くらいを思い描いても、それで想定する技術革新は、おそらく10年後には到来するだろう。という気がするので、いっそのこと、「100年後」くらいを思い描いても、結局10年くらいしか耐えられないだろうということだ。
ましてや、最初から数年後を想定するようなビジョナリーでは、来年には期限切れになりかねない。
インターネットが家庭に入り始めてから、まだ15年しかたっていないという速度の中で、モメンタムが大きく、すぐには舵をきれない電子行政の数年後の政策を考えるには、必要なビジョナリーのスパンだと思う。

2月 17, 2011 |

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