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2005年7月22日 (金)

e文書法特需はありません

最近社内で、e文書法で何かビジネスにできないか?と聞かれることがあります。
なんでそんなことをぼくに訊ねるのかを聞いてみると、ぼくが経済産業省 e文書ガイドラインの検討委員だからとのこと。
う~む。それなら回答してあげないといけないね。ということで、それへの定型回答を用意してみることにしました。

一言で言うと、e文書法は金科玉条(きんかぎょくじょう)ではありません。
別の言い方をすると、e文書法は必要条件ではあっても、十分条件ではありません。

e文書法ですが、これまで行政書類等については電子文書が極限定的にしか認められていなかったのに対して、「電子文書を使ってもよい」というように制限緩和をしただけの法律です。
「電子文書を使いなさい」ということではありません。
言い換えると、これまで原則として門前払いだったものを、門の中には通しますよ。ということですが、門の中にはまだ玄関があって、その玄関が開いているわけではないですし、e文書法は玄関についてを論じるものではありません。
単に「門前払いはやめました」というところまでのものです。

いままで門前払いだったものが、門の中に入れるようになったので、「役所それぞれの玄関をどうするかを決めることで、電子行政ができるようになったけど、あなたの役所は玄関もあけますか?それとも、開けませんか?どうしますか?」というだけです。
その意味では、この法律は、(正確な表現ではありませんが、)政府関係者対象のものと思うとわかりやすいものです。
「e」がついているので、IT業界が何かビジネスのネタにできないかと思っている風潮がありますが、民間に直接関係する段階のものではありません。
玄関が開いたときに備えて準備をしましょうというきっかけとしては民間に関係すると言えますが、e文書としての要件は、この後に各玄関で決められることになりますので、準備といっても、心づもり程度のことです。

「e文書を使ってもよい」ということで、必要条件の一部を示していますが、十分条件については示していません。

これについては、経済産業省 e文書ガイドラインの補足にて少し説明してあります。


すでにe文書法対応などと銘打った製品がありますが、e文書としての十分条件がまだないわけですから、「e文書法対応」というのは、嘘ではないですが十分でもない表現です。 つまり、必要条件さえ満たしていれば、どんなものでも、「e文書法対応」と言えないわけではなく、言った者勝ちということになります。

もし今後十分条件が示されることになったとしても、包括的な要件になるとは考えにくく、個々の電子行政サービスごとの要件となるため、「e文書法対応」という包括的な表現はあまり誠実なものとは言えず、たとえば、「税務申告における電子文書要件対応」など個別のことになるのであろうと考えます。
しかしながら、文書保管のことで考えれば、将来どんな課題が生じるかを予測することは技術的に困難であり、十分条件を予め示すということがどこまで行なわれるかは疑問です。
必要条件だけを示しておき、実際に、e文書について問題が生じた際には、その時点で正当性や妥当性についてを判断するということにして、十分条件については予めは示さないというのが現実的ではないかと思われます。
何らかの問題について判例が出れば、それを個々に積み重ねていくことで、十分条件に相当するものが構成されていくのではないかと思います。

したがって、「e文書法対応」として何か一括してのビジネスが見込めるものではなく、今後の電子行政のそれぞれを見据えながら順次対応していくような地道なビジネスが従来どおり求められていると考えるのが現時点ではよいと思います。

結論:

●ITベンダーのみなさんへ、

「個人情報保護法特需」のような「e文書法特需」はないと思って日々の地道な営業活動を継続してください。
「e文書法対応製品」という売り方は、どれかひとつの必要条件を満たしていれば嘘ではありませんが、十分ではないのですから十分ではないことを示して売るのが誠実なビジネスです。十分であるかのごとくの印象を与えて売るということは絶対してはいけません。だとすれば、「この製品はe文書として(必要条件を満たしていますが)十分ではありません」と言うだけですから売り文句にはなりません。他の誠実な売り文句に付録として「e文書の必要条件も満たしています」を付け加える程度がよいでしょう。
家電製品で言えば、「BS放送対応テレビ」と言った場合に、「BS放送を受信するには、この他にパラボラアンテナや追加の受信料などが必要です」を付け加えるかどうかと同じです。
お客様が「このテレビはBS対応ですか?」と言って買いに来たのなら、「はい。BS対応です。」と言って売るのは問題ありません。それでも、パラボラアンテナの説明をするのが親切でしょう。
そうでもないのに、パラボラアンテナのことを話しに出さずに、「BS放送対応」ばかりを強調して売るのは、「対応」という言葉として嘘ではないですが、BS放送の受信には十分ではないわけで、いかがわしいビジネスとあまり変わりません。
しかも、e文書の場合、実際には、十分条件を完成させるための「BS放送」自身がまだ存在しないわけです。
いま、「e文書法対応」と言うことは、BS放送が開始していない時点で、BS放送対応と言うのと変わらないという認識をすべきです。

●ITベンダー利用者のみなさんへ、

住宅では、耐震強化工事詐欺や、アスベスト診断・除去工事詐欺などがありますが、
企業におきましては、「e文書法対応詐欺」(※注)にもご注意ください。それらは必要条件を満たしているかもしれませんが、十分条件を満たしているかどうかはその時がくるまでわからないはずですから。
BS放送が始まっていない段階で、購入するテレビの機種選択をする際に、BS放送対応をどの程度重視するかについてはよく考えましょう。
BS放送は工業規格ですから、先買いしておけば、BS放送が開始したときに無駄にはなりません。
しかし、「e文書法対応」と言っているものが、どこにどう対応しているかは、BS放送対応ほど簡単なことではありません。


※注:耐震強化工事、アスベスト診断・除去工事と同じく、e文書法対応にも詐欺ではない正当な提案もあります。それを見極めるには利用者みなさんの正しい知識が必要です。

7月 22, 2005 |

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コメント

賛成!。

「○○○法対応」製品というものにはやはり、売りたい人の気持ちがいっぱいつまっているのは分かるのですが、ちょっと言いすぎじゃないの?と思うものが多いですよね。

「○○○法対応」製品は、必要条件ではあっても十分条件を満たしていないものがほとんどだと思うんですよね・・・

「個人情報保護法対応」製品というのも変ですし・・・

これから日本でも「サーベンス・オクスリー法対応」製品、「内部統制監査」対応製品というのもでてきますよ。

でも、その製品を導入したからといって、「内部統制監査」が適正意見になるというものではないですよね・・・
「内部統制監査」のために必要な対応の一部が人手をかけずにソフトウェアで対応できますよ・・・ということかなぁ・・・

投稿: 丸山満彦 | 2005/07/23 8:46:33

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